海外へのススメ
卒業旅行が終わり、いよいよ就職が目前になりました。初出勤の日まであとわずか、不安ばかり感じていましたが、旅行に行った友人とも「とにかく頑張ろう」と言って京都旅行を終えていたので、その時の事を胸に頑張るつもりでいました。
会社への通勤が始まりました。英語科を生かした仕事に就きたかったのですが所属した部署は経理課だったのです。毎日毎日、伝票から帳簿への転記と計算、銀行へのお使いと楽しくなかった訳ではありませんが、満ち足りてはいませんでした。私にとってお給料が貰えるようになった事が何よりの事で、あとは旅行のために、夢見る海外のためにお金を貯める事が唯一の楽しみになりました。
会社にはアルバイトの夜間大学の学生がいました。新卒で入れた私とは年齢もあまり変わらなかったので話しも合い時間があると良く話しをしました。ある時、大学を卒業して就職する前にヨーロッパを旅して来たいという事を話しだしました。もう、私としては大賛成の話しです。是非行って来て欲しいと心から思いました。彼のプランは夏休みの40日あまりをバックパックを背負っての旅と考えているようです。チケットも行き帰りの便のみ指定して、本当に思い切った旅になりそうな予感がたっぷりするのです。イタリアにフランスからスペイン、モロッコ、そしてイタリア、ギリシャ・・私だって行った事はないですが、バックパックを背負った男一人旅の光景が帰って来て写真を見せてもらったかのように思い浮かぶのでした。
行った事がないとしても旅行計画は比較的得意で好きだった私は、早速ヨーロッパのガイドブックを入手し、そして更にトーマスクックの時刻表まで揃えて彼のプランづくりの相談役となりました。ガイドブックを見ているとだんだんヨーロッパが私の頭の中を埋め尽くしていました。なんだか昔行った事があるかのような気になってしまうくらいです。
その頃、頭の中がヨーロッパで一杯になった私とは違って、アルバイトの彼は少しだけ旅行に迷いが出て来たようでした。